もし今、何者でもない私に生きる意味はあるのかと問われれば、相変わらず"ない"と答えるだろう。

 だから、今の私に生きる意味はない。

 でも、別にそれでよかった。

 明日、彼と海に行こう。
 そんな、約束とも言えないような、ただなんとなく決めたことだけで、私は生きていける。大層な意味や理由など、やっぱりいらなかった。


 掌で飼い慣らせるような苦しみと、掌で包み込めるような幸せさえあれば、それで十分に生きていけるのだ。

 それが私にとって、何者でもない彼の隣にいることだ。

 私はそう結論づけて、この一つの物語を終えることにした。