結局、ここまで来て、やっと私は気づいた。
 私は神様に、懺悔しに来たのだと。罪を告白し、悔い改めると誓いに来たのだ。私は、私のために。彼を救いに来たわけではなかったのだ。

 結局神様がそれを否定するまで、私は信じていなかった。彼が、神様ではないことに。
 それに気づいて、ようやく目の前の彼を確かに視界に入れることができた。読み取れなかった彼の表情。それは、読み取れなかったのではなく、読み取ろうとしなかっただけで。

 目の前の彼はぼろぼろで、泣くのを必死に耐える子どものようだった。

 私には、最後の天命があった。
 乱暴に天に投げられてしまった人間の彼を、引きずり落とすという、その使命が。

「アキ」

 一つ一つの言葉が彼に届くように、決して視線を逸らさない。

「私がアキを、引きずり落としてあげる」

 一段一段、彼の元に向かう。一段上る度に、彼への信仰を払い落とす。もう、見誤ってはならなかった。

 アキの座る段に、足をかける。もう、後戻りはできないしする気もない。彼に、ゆっくりと手を差し出す。

「終わりにしよう、アキ」

 彼は私を見上げる。その瞳は濡れていて、彼がただの弱い人間であることを証明していた。彼はゆっくりと私の方に手を伸ばし、そして私の手を握る。私もそれを、強く握り返した。