ゆるりと上げられた顔。その表情は、意図が読み取れない。言うなれば、虚ろだった。もう、手遅れなのかもしれない。そんな思いが過った。

「アキ、ごめん」

 届くかも分からない謝罪を、ぼんやりと合っているのかも分からない目を合わせて口にした。今ここで、全てを謝りたかった。それしかできないと思っていたから。それを彼が望んでいるのかも分からない。それでも、こうするしかなかった。

「アキのことを、私は、他の人と同じように」
「ねぇ、ひよ」

 アキの声が、私の言葉を遮った。アキの表情は変わらず、目に映っているのが本当に目の前の私なのか分からない。アキが、息を吸った。次に発される言葉を、私はじっと待つ。

「神なんて、いないよ」

 そして、その言葉が、ふわりと落とされた。私が立っている位置よりも数段高いところに彼は座っていた。少し顔を上げれなければ、彼の顔は見えない。

 目の前にいる、私の神様。その神様が、神はいないと言ったのだ。神様は絶対で、神はいないと神が言ったならば、それは正しい。疑う余地もなかった。