その日から3日ほど経った。夏休みに入ったというのに夏期講習会に参加している私は、3日間毎日登校、つまりは夏休み前と変わらない日々を送っていた。
「陽頼」
授業の合間の10分間の休憩時間。不意に前方から名前を呼ばれて、私は顔を上げる。声の主は前の席の友人である湊だった。
「何?」
「これ、聴いた?」
湊はそう言ってスマートフォンの画面を見せてくる。何かのMVらしい。
「昨日の夜投稿されたんだけど、すっごい話題なんだよね」
湊は友人も多く流行に敏感でそういう情報はすぐに手に入れている。私は疎い方であるため、大抵のことは湊から知ることが多い。例によって今回もそうだ。
「知らない。なんて曲?」
「Re:PLAY。投稿されてまだ全然経ってないのに再生回数ヤバいんだよ」
そう言われて見せられた画面に書かれた数字は、確かにかなりの桁数だ。「聴いてみるね」と一言返すと、湊は「おっけー」と返してまた前を向き直した。
自分のスマホを取り出してイヤホンを刺す。動画投稿サイトを開いて、"リプレイ"と打ち込むと、最上部に先程見せられたのと同じ動画があった。イヤホンを付けて、その動画をタップした。
その瞬間、私は思わず「えっ」と声を上げてしまった。無理もない。聴こえてきたのは、あの日聴いた曲のイントロ。そして、次いで聴こえてきたのは、間違いなく私の歌声だった。
「どーした?」
いつの間にかまた振り返っていた湊が声をかけてきた。
「あ、いや、なんでも」
そう返したものの、思考が追いつかない。確かに彼は私の歌声で彼の曲を世に出したいと言っていた。でもまさか、こんなに再生されるほどだとは。
ふわふわと落ち着かない気持ちのまま画面をスクロールして、コメント欄を開く。興味と恐怖が半々だった。
『メロディが耳に残る』
『歌詞がめっちゃいい』
『歌声きれい』
『中毒性ある』
肯定的なコメントが多く見られて少し力が抜けた。しかし、それよりも多くのコメントは、私にはよく理解できないものだった。
『もしかして千明暁、復活?』
「陽頼」
授業の合間の10分間の休憩時間。不意に前方から名前を呼ばれて、私は顔を上げる。声の主は前の席の友人である湊だった。
「何?」
「これ、聴いた?」
湊はそう言ってスマートフォンの画面を見せてくる。何かのMVらしい。
「昨日の夜投稿されたんだけど、すっごい話題なんだよね」
湊は友人も多く流行に敏感でそういう情報はすぐに手に入れている。私は疎い方であるため、大抵のことは湊から知ることが多い。例によって今回もそうだ。
「知らない。なんて曲?」
「Re:PLAY。投稿されてまだ全然経ってないのに再生回数ヤバいんだよ」
そう言われて見せられた画面に書かれた数字は、確かにかなりの桁数だ。「聴いてみるね」と一言返すと、湊は「おっけー」と返してまた前を向き直した。
自分のスマホを取り出してイヤホンを刺す。動画投稿サイトを開いて、"リプレイ"と打ち込むと、最上部に先程見せられたのと同じ動画があった。イヤホンを付けて、その動画をタップした。
その瞬間、私は思わず「えっ」と声を上げてしまった。無理もない。聴こえてきたのは、あの日聴いた曲のイントロ。そして、次いで聴こえてきたのは、間違いなく私の歌声だった。
「どーした?」
いつの間にかまた振り返っていた湊が声をかけてきた。
「あ、いや、なんでも」
そう返したものの、思考が追いつかない。確かに彼は私の歌声で彼の曲を世に出したいと言っていた。でもまさか、こんなに再生されるほどだとは。
ふわふわと落ち着かない気持ちのまま画面をスクロールして、コメント欄を開く。興味と恐怖が半々だった。
『メロディが耳に残る』
『歌詞がめっちゃいい』
『歌声きれい』
『中毒性ある』
肯定的なコメントが多く見られて少し力が抜けた。しかし、それよりも多くのコメントは、私にはよく理解できないものだった。
『もしかして千明暁、復活?』