ひよと共に活動を始め、俺の彼女に対する思いの中で一番大きかったのは、罪悪感だった。きっとそれは、死ぬまで消えないのだろうと思った。
 既に死を決めている人間に将来を託したひよと、ひよの両親に対する申し訳なさ。俺は自らの目的の遂行のために死ぬ。死ねばもう彼女に何かをしてやることなどできない。俺は無責任に彼女をこの世界に置いていくことになる。それはもう決定事項だった。

 これまで俺は自分の目的のことでいっぱいだった。だから、それに巻き込む人間のこれからの人生のことなど考える余裕はなかった。しかし、気づいてしまった今、できることは一つ。彼女にできる限り多く、残してやることのみ。歌はもちろん、この世界で出来るだけ彼女が長く生きていけるよう、関係性を作っていく。煩わしい飲み会も接待も、全ては彼女のために。いや、俺のためだったのかもしれない。自らの死ぬまで消えることのない罪悪感を、少しでも薄めたいがための行動だった。

 彼女の前ではだらしない自分を隠すこともない。それは、ただ単に彼女に心を許しているからではなく、彼女の中で俺の外に見せるきちんとしたイメージを確立させたくないという理由であった。駄目な人間でいたかった。彼女に呆れられるくらいでよかった。神様のように思われたくもなかったし、俺が死んだ後彼女に必要以上に悲しまれたくもなかったのだ。

 それなのに彼女は、俺の全てを受け入れるような態度を見せた。仕方ないなぁなんて言いながら、甲斐甲斐しく俺の世話を焼く。その姿を見ると、なぜか俺は安心感を覚えて、甘えてしまいたくなった。ずっと欲しかったその安心感に、どこか身を委ねたくなる。年下だとか、目的だとか、そんなのどうでもよくなるくらいに、その安心感に包まれたかったのだ。