離婚後は、俺も凛も母についていくことになった。父と母の仲は最早修復不可能で、子どもながらにもう父に会うことはないのだろうと悟った。弟もそれをどこかで分かっていて、最後の夜は父に泣きついて離れなかった。それを俺は、少し遠くから見ていた。

 そうして始まった母と俺と弟の3人暮らし。もちろん、生活は楽ではなく。母はやっと見つけたパートの仕事で朝から夜まで忙しく、家を空けていることが多かった。時々置かれている200円玉を握りしめて、凛と二人でアイスを買いに行くこともあった。凛は迷わずバニラのアイスを選ぶ。俺は、少し迷ってストロベリーのアイスを買った。母の好きな味だった。
 その頃から俺は気づいていた。母の心のバランスが、崩れかけていることに。だから、少しでも壊れてしまわないようにと、幼い頭で考えた結果だった。母はそれを申し訳なさそうに、しかしそれと共に嬉しそうに受け取ってくれた。でもそれは、最初のうちだけで。

「どうしてこんな点数しか取れないの!」

 怒鳴りつける母の声、劈くような弟の泣き声。

「もう、うるさい!黙って!」

 母がヒステリックになって怒鳴り散らすほど、弟は泣き喚いた。成績もそれほど悪くなく、察する能力が少しだけ優れていた俺は、それをどうにかかわすことができていたけれど、5つ下の幼い弟には、それは難しくて。
 母が少し落ち着いた隙を狙い、弟を連れて別室に行き、子守唄を歌ってやった。そうすれば弟は泣き止んで、スイッチが切れたように眠る。そんな日々の繰り返しだった。