「ひよさん、何飲まれますか」
「あ、じゃあ紅茶を」

　近くのカフェに入り、二人で向かい合った席に座る。初対面の人と二人きりというのは、さすがに緊張する。

「……あの」

　私の声に、彼はすぐに顔を上げて「はい」と微笑みかけて見せる。

「どうして私がひよだと分かったんですか？」

　その質問に、彼は「ああ、そうですね、お伝えし忘れてました」と頷き、「千明くんからよく聞いていましたので」と言い、「画像まで見せてくれたんですよ」と続けて微笑ましそうに笑った。
　画像を見せてまで私の話を他人にしていただなんて、全く知らなかった。そういえば彼は、「自撮りしよ」と突然言ってきたことがあった。そういうのが好きなタイプなのかとその時は思ったけれど、それ以来全くそんな誘いはなかった。もしかして、見せるためだったのだろうか。

　そんなことを考えていると、注文していた河本さんのホットコーヒーと私の紅茶が運ばれてきた。

「彼は何度も繰り返し言っていてね。ひよさんのことをよろしくお願いします、本当にいい奴だからって。本当に、何度も何度も。お酒が入ると特に」

　コーヒーを飲みながら、まるで懐かしむように彼は言う。それに少しの違和感を覚えた。