「あれ、ひよさんですか?」
だから、"ひよ"という呼び方に、思わず驚いて振り返った。
高校からの帰り道。しばらく呼ばれなくなっていた"ひよ"という呼び方。彼しかしないはずのその呼び方が、全く知らない男性の口から発された。顔出しはもちろんしていないし、今私は声を出していない。私が"BLUE PILL"の"ひよ"だということがバレる要素など、なかったはず。
頭の中でぐるぐると考えているうちに、目の前の男性は自ら名乗った。
「驚かせてすみません、私、ABCミュージックの河本と申します」
手渡された名刺を頭を軽く下げてから受け取る。
「ひよさん、ですよね」
「あ、はい。そうです」
アキが言っていた、契約したレコード会社。名刺を見ても確かに彼はその会社の社員の方らしい。
「よかった、お会いしたかったんですよ。どうですか、これからお時間あれば、お茶でも」
少し戸惑いつつ、私はその誘いを了承した。これからの仕事にも関わるのだろう。断るというのも印象が良くないだろうし。河本さんはにこりと柔和な笑みを浮かべ、「では近くのカフェに入りましょう」と微笑んだ。私はそれに口角を上げて頷いて答えた。
だから、"ひよ"という呼び方に、思わず驚いて振り返った。
高校からの帰り道。しばらく呼ばれなくなっていた"ひよ"という呼び方。彼しかしないはずのその呼び方が、全く知らない男性の口から発された。顔出しはもちろんしていないし、今私は声を出していない。私が"BLUE PILL"の"ひよ"だということがバレる要素など、なかったはず。
頭の中でぐるぐると考えているうちに、目の前の男性は自ら名乗った。
「驚かせてすみません、私、ABCミュージックの河本と申します」
手渡された名刺を頭を軽く下げてから受け取る。
「ひよさん、ですよね」
「あ、はい。そうです」
アキが言っていた、契約したレコード会社。名刺を見ても確かに彼はその会社の社員の方らしい。
「よかった、お会いしたかったんですよ。どうですか、これからお時間あれば、お茶でも」
少し戸惑いつつ、私はその誘いを了承した。これからの仕事にも関わるのだろう。断るというのも印象が良くないだろうし。河本さんはにこりと柔和な笑みを浮かべ、「では近くのカフェに入りましょう」と微笑んだ。私はそれに口角を上げて頷いて答えた。