そんな日々が続くある日。いつも通り、放課後に彼の家に寄った。その日の朝、彼の姿はなかったものの、メモも置いてなかったため、彼は帰ってくるのだろうと思っていた。しかし、いくら待っても彼は一向に帰ってこない。部屋の掃除をして、スマートフォンを弄りながら暇つぶし。
 しばらくそうして時間を潰し、気づけば時計の針は午前0時。最近の帰宅時間が遅くなっているとはいえ、さすがにこの時間は親も心配していて、メッセージが送られてくる。それに無事ということを返しつつ、さすがに帰った方がいいだろうと思い、立ち上がった瞬間。ガチャリ、と扉の開く音がした。待ち望んでいた音。少し胸が弾むのを感じて、玄関に向かう。しかし、そこで見た光景に、私は思わず「えっ」と声を上げた。

 ぐったりと、壁に寄りかかる彼。暗くて状況がよく把握できないけれど、どこかおかしいことだけは分かる。

「アキ!」

 胸騒ぎがして、私は彼の元に駆け寄った。彼の体に触れて感じたのは熱っぽさで、焦りを感じる。足元の覚束ない彼の体を支える。

「え、あれ?ひよ、じゃん」

 リビングから漏れる光で辛うじて見えた、彼のふにゃりと笑った表情。それと、きついアルコールの香り。これは、体調不良ではなくて、もしかして酔ってるだけ?

「いない、かと、思ってた。ふふ、いたんだ。ただいまぁ、ひよ」

 あの日の夜以上に、彼はふにゃふにゃと笑っている。舌足らずな声が、私の名前を紡ぐ。

「もう、びっくりしたじゃん。ほら、ちゃんと立って」
「無理」
「無理って。いや、せめてリビングまでは行こ」
「やーだ」

 なるほど、彼は酔うと面倒なタイプらしい。