「それとね、私、BLUE PILLだけじゃなくて、千明暁の作った曲全部好きなの!」
そう言って彼女はCDラックからCDを取り出した。BLUE PILLのCDもあるけれど、少し古そうなCDもある。様々なアーティストのCDだけれど、アキが提供した曲が収録されているらしい。彼女は私以上に千明暁のことを知っているように思えた。私は今のアキしか知らない。過去の彼のことは、軽くネットに上げられた記事を読んだだけだ。
アキは、きっと凄い人。でも、私には理解しきれない彼の曲の良さ。それを全て、彼女は知っているのだろう。
「千明暁の曲の良さって、何?」
それまで彼女の話に相槌を打っていただけだった私は、彼女の目を見て問う。彼女は、ふわりと笑った。
「彼の音楽はね、私を救ってくれるの」
その笑みは、先ほどの笑みとは違うような気がした。柔らかい、見覚えのある彼女の笑みではない。
「彼の音楽を、闇から救ってくれるって言う人もいるの。でも、違う。彼の音楽は、闇から救い出してなんてくれない。彼はね、闇の中に手を引いていってくれるの。ひとりじゃないって。ただ、孤独だけを奪ってくれるような、そんな音楽なの。ひとりぼっちの恐怖から、救ってくれるの」
「だから、」の後に続く、「彼は私の神様なの」という言葉に、無性に、逃げ出したくなった。昨日感じた、恐怖に似ていた。ただ、あの不快な浮遊感のようなものを感じないのは、彼女が話しているのが私のことではなく、彼のことだからだろう。
彼女は、彼を神だと崇める信者の一人だ。インターネット上でそのような人々が多く存在していることは知っていたけれど、目の前にするのは初めてだった。彼女の視界に、私はいない。彼女の見ている世界は、今、私が見ている世界とは違う。その異常さのようなものを感じて、寒気がした。
そう言って彼女はCDラックからCDを取り出した。BLUE PILLのCDもあるけれど、少し古そうなCDもある。様々なアーティストのCDだけれど、アキが提供した曲が収録されているらしい。彼女は私以上に千明暁のことを知っているように思えた。私は今のアキしか知らない。過去の彼のことは、軽くネットに上げられた記事を読んだだけだ。
アキは、きっと凄い人。でも、私には理解しきれない彼の曲の良さ。それを全て、彼女は知っているのだろう。
「千明暁の曲の良さって、何?」
それまで彼女の話に相槌を打っていただけだった私は、彼女の目を見て問う。彼女は、ふわりと笑った。
「彼の音楽はね、私を救ってくれるの」
その笑みは、先ほどの笑みとは違うような気がした。柔らかい、見覚えのある彼女の笑みではない。
「彼の音楽を、闇から救ってくれるって言う人もいるの。でも、違う。彼の音楽は、闇から救い出してなんてくれない。彼はね、闇の中に手を引いていってくれるの。ひとりじゃないって。ただ、孤独だけを奪ってくれるような、そんな音楽なの。ひとりぼっちの恐怖から、救ってくれるの」
「だから、」の後に続く、「彼は私の神様なの」という言葉に、無性に、逃げ出したくなった。昨日感じた、恐怖に似ていた。ただ、あの不快な浮遊感のようなものを感じないのは、彼女が話しているのが私のことではなく、彼のことだからだろう。
彼女は、彼を神だと崇める信者の一人だ。インターネット上でそのような人々が多く存在していることは知っていたけれど、目の前にするのは初めてだった。彼女の視界に、私はいない。彼女の見ている世界は、今、私が見ている世界とは違う。その異常さのようなものを感じて、寒気がした。