制服に着替えて借りていたスウェットを洗濯機に入れ、一旦家に戻る。母の心配に問題ない旨を伝えて自分の部屋に入り、私服に着替えてまた家を出た。向かう先は近くのスーパーマーケット。彼の夕食の材料を買うためだ。
 澄み切った空。秋晴れというのだろう。

「あ」

 前方から、声が聞こえた。その声の方に目を向けると、一人の女の子。

「志島さん、だよね」

 私の苗字を口にする彼女。彼女は、確か。

「…佐山さん?」
「うん。覚えててくれたんだね」

 彼女、佐山さんはクラスメイトだ。ただし、5月から学校に来ていなかった。席が近かったこともあり、何度か会話をしたことがある程度の関係性だった。肩までの髪を揺らして、彼女は遠慮がちに私を見る。

「久しぶり、だね」
「うん。そうだね」

 取り立てて話すこともなかった。少しの沈黙が流れる。

「あ、のさ」

 彼女の声が聞こえて、目を合わせる。

「良ければ、うちに来ない?」

 突然の誘いに、少し驚いた。家に呼んでもらえるほどの関係性を築けているとは思っていなかったからだ。

「…無理にとは、言わないんだけど、その…久しぶりに、同級生に会ったから、嬉しくて」

 ふわりと笑う彼女を見て、そういえば彼女はこんな風に笑う子だったなと思う。

「…うん。じゃあ、お邪魔しようかな」

 夜までに時間はまだまだある。彼女の誘いを断る理由は、特になかった。

「よかった、ありがとう」

 そう言って笑う彼女に軽く笑って見せ、彼女の少し後ろを歩いた。