それからの質問も彼が先に答え、その後に彼が私に対して嚙み砕いた簡単な質問を投げてくる、という流れが続いた。私の纏う固い空気が彼にはよく伝わってしまっていたのだろう。インタビューに慣れない私への彼の気遣いが痛いくらいに伝わる。彼にばかり負担をかけさせないようにと思って承諾したインタビューだったけれど、いつも以上に彼は気を回しているのだろう。彼の器用さに驚きつつも、申し訳なさを感じる。

「ひよさんにとって、千明さんはどういった存在ですか」

 そして、突然振られた私だけに向けられた質問に分かりやすく戸惑ってしまった。どういった存在か。私にとって、彼は。きちんと考えたことがなかった。咄嗟に気の利いたことを返すことなどできない。ちらりと彼の方を見ると、彼はにこりと口角を上げた。彼の意図が読み取れないままに、私にとって真に彼がどういう存在なのか、ということを考えるのはやめた。

「…頼れる、先輩、みたいな感じ、ですかね」

 結局、面白くもなんともない回答をしてしまった。インタビュアーはそんな回答にもにこやかに頷く。間違ってはいないだろう。面白みがあるかないかは別として。彼の方を見ると口角を上げたままインタビュアーの方を見ていて、その回答が適切であったかどうかは判断できなかったけれど。
 それからまたインタビュアーは二人に共通する質問をして、私はアキにフォローされつつ回答していった。

「貴重なお話をありがとうございました」
「いえ、こちらこそお時間いただきありがとうございました」

 インタビューは穏やかな空気で終わった。アキは笑顔でインタビュアーと何度か言葉を交わす。私も横で頷いたり、時には合わせて笑ったりしていた。その中で彼のコーヒーカップに目が行った。綺麗に飲み干されたそれを見て、熱いものも苦いコーヒーも苦手だろうにな、と思った。