骨を折ったのは親の説得だった。しばらく親に何も言わずに彼の元に通い詰めていたのだが、いよいよ契約となるとさすがに同意を得なければならなかった。彼は既に私が親の同意を得ていたと考えていたらしく、その旨を伝えると、「馬鹿じゃん」と一言呆れ顔で返されたのは記憶に新しい。毎日制服で来てるんだから少しは違和感を感じなかったのか、とも少し思ったが、彼はそれほど他人に興味を持つタイプでないことはこの1ヶ月のうちに理解していた。
「早く言って来なよ」
そう言われて彼の家を追い出され、朝来た道を引き返す午前11時半。父は仕事で家にいないため、まず母に伝えることになる。玄関の前で一つ息を吐く。悪いことをして帰ってきた子どものような気持ちだった。
「ただいま」
声は少し硬かった。近づいてくる足音に、少し逃げ出したくなった。
「どうしたの、忘れ物?」
母の声色には、少し心配が含まれているようだった。本来よりもかなり早い時間に帰宅したのだから、それもそうか。忘れ物か体調不良か、それとも。色々な可能性が考えられるだろうけれど、これから私が話すことはきっと全く想像もしていないことだろう。
「ごめん、私、夏期講習会には行ってないんだよね」
「早く言って来なよ」
そう言われて彼の家を追い出され、朝来た道を引き返す午前11時半。父は仕事で家にいないため、まず母に伝えることになる。玄関の前で一つ息を吐く。悪いことをして帰ってきた子どものような気持ちだった。
「ただいま」
声は少し硬かった。近づいてくる足音に、少し逃げ出したくなった。
「どうしたの、忘れ物?」
母の声色には、少し心配が含まれているようだった。本来よりもかなり早い時間に帰宅したのだから、それもそうか。忘れ物か体調不良か、それとも。色々な可能性が考えられるだろうけれど、これから私が話すことはきっと全く想像もしていないことだろう。
「ごめん、私、夏期講習会には行ってないんだよね」