「コメント欄の反応、凄かったですね」

 ココアを飲み干した彼にそう言うと、「ね」と彼は私と目を合わせた。

「色んなこと考えるよねぇ皆。曲の考察とか、俺の方がへ~って思った」

 彼はそう言って頬杖をつく。

「俺が考えてるよりよっぽど深読みしてくれるんだよね、聴いてくれる人って。まあ俺は人それぞれ自分が楽しいように解釈してくれればそれでいいんだけど」

 どこか興味なさげに言う彼。彼の曲はどこか抽象的な感じがする。想像力のない私には、いまいち彼の曲の良さを理解しきれていないように思う。理解していなくても淡々と歌うだけなのだから、さして問題はないのだけれど。しかし、人々が彼を神だと崇める理由が分からないのだ。私は神と呼ばれる彼の隣にいて、彼の神たる所以を理解していないのは、いかがなものか。

「千明さんは、自分のこと神がかってるな、とか思いますか」

 私の顔を彼は不思議そうに見る。公園で見つめられたあの、少年のような瞳で。しかし、その目はゆらりと細められた。彼が笑ったのだと理解するのに、少し時間を要した。その笑みは、子どもができるような表情ではなかった。

「俺は、神に相応しいと思う?」

 質問に質問で返される。試されている、と直感した。まるで全てを見透かすような瞳。嘘をついても無駄だと、小さな子どもに諭すような。その時初めて私は、少しだけ彼に恐怖を抱いたのかもしれなかった。恐怖と言っていいのか分からない。この感情が何なのか、よく分からなかった。

「相応しいかは、分かりません。...でも、千明さんを神だと思ったことは、今のところは、ないです」

 発された声は思っていたよりもか細かった。いつの間にか俯いていた顔を恐る恐る上げる。彼は笑った。笑ったのだと、今度はすぐに分かった。

「俺も」

 私の目を見つめ、彼は言う。

「俺も、自分のことを神がかってるとか、ましてや神だなんて、思ったことないよ」

 柔らかい笑みに、どこか救われるような思いがした。

「だからさ、ひよ」

 私は、彼の顔を見ていた、はずだった。それなのに、彼の表情を覚えていない。ただ、かけられた言葉は、声色と共に鮮明に覚えている。

「これからも、俺の信者になんかならないでね」