「いやあ、結構盛り上がったね」

 翌日の朝。ココアに恐る恐る口を付けながら彼はそう言った。「あっつ」という言葉と共に、所々はねた寝癖を揺らす。神だなんだともてはやされる彼の姿がこれだとは、人々は想像もしないだろう。

「名前、出したんですね」
「んー?あ、千明暁ってこと?うん。その方が上手くでしょ、今後」

 「使えるもんは使った方がいいよね」と言う彼は自分のネームバリューを理解しているようだった。そこには謙遜も驕りもなく、ただ事実として受け入れているだけ、というような感じだ。

「ひよって名前出したけど、いい?」
「今更ですよ。別にいいですけど」
「うん、そう言ってくれると思った」

 時折見せるどこか子どもっぽい笑顔に、怒る気はしない。元々特に怒ることでもなかったけれど。

「それと、BLUE PILLって何か意味とかあるんですか」

 私はもう一つ疑問をぶつける。彼が私達のユニットにつけた名前だ。何か込められた意味でもあるのだろうかと、純粋に気になった。

「いや、特には」

 回答はかなりあっさりとしていた。ないんかい、とつっこみそうになる。キャラではないのでしない。

「英語だったらかっこいいかなって」

 答えになっていない答えを残して、また彼はココアに口を付ける。きっともう十分に冷めているだろう。もう既にその話題には興味を示していない彼を見て、私は深堀りすることをやめた。