「馬鹿みたいだって、思わなかった?」

 彼は私の返事を聞いて一拍置き、そう言った。私は視線を落とす。思い当たる節があったから。コメント欄を見て、滑稽だ、と一瞬でも思ってしまった。

「……少し」

 視線は落としたままそう答える。彼の方をちらりと見ると、彼はふっと表情を和らげて、「だよね」と笑った。

「普通そう思うでしょ。君って高校生だよね。俺のこと知らないだろうし、それなら尚更」

 彼はそう言うと、「リンー」とリンさんを呼ぶ。リンさんはふらりと現れて、彼の膝の上に乗り、彼はリンさんを撫で始める。私はそれをぼんやりと見ていた。

「それで?」
「え?」
「今日来たのは、俺が千明暁であるかどうかを確認するため?」

 リンさんから視線を上げて、また私と目を合わせる。

「…そうですね、そのつもりで来ました」

 私の返答に、彼は「ふーん」とつまらなそうに言って視線をリンさんに落とした。しかしすぐに「じゃあさ」と私に視線を向け、少し前のめりになる。

「君の声を、俺に買わせて」

 そして、聞いたことのある台詞を口にしたのだった。