俺は彼女から受け取った買い取り明細に視線を走らせた。
 アンデッド・オーガの素材一式で金貨三十五枚。日本円にして三千五百万円ほどだ。
 受ける被害や損害、討伐に参加する人数を考えると妥当な額なのかもしれないが、ついこの間まで日本の高校生だった俺からすればちょっと想像し難い金額だ。

「参考までにお伺いしたいのですが、通常のオーガだとどれくらいになりますか? 大体の金額で構いませんので教えてください」

 常識なのだろう、三人が不思議そうな顔をした。
 俺は『この国の相場をまだ理解していませんので』と付け加えるとギルド長が答えた。

「金貨二枚から三枚といったところです」

 十倍以上か。アンデッド・オーガも普通のオーガも戦闘力的には大して差はなかったから、希少価値ということなのだろう。

「献上品の鑑定をお願いしてもよろしいですか? 魔術師ギルドの鑑定証明証を発行頂ければ心強いです」

 たったいま女性から受け取った代金から、金貨五枚を最初に渡した長剣の横に積み上げる。
 ギルド長と二人の女性が息を飲んだ。

「こちらは鑑定証明証の発行手数料と急いで頂くことへの私の気持ちです」

 鑑定証明証の発行費用は、代物によって多少の差はあるが銀貨十枚。日本円にして十万円程度だ。
 押し黙るギルド長に向けて言う。

「商品はまた仕入れればいい。金はまた稼げばいい。ですが、時間だけは取り戻すことができません」

 さっきも言っただろう。時間は何よりも貴重なんだよ。特に今はな。