「本物です……。確かに硬化と自己再生能力が付与されていました」

 鑑定役の女性の声が震えている。
 この剣がどの程度の価値があるのか判断できないが、彼女とギルド長の表情から見て相当に価値があると考えて良さそうだ。

「カンナギ殿、鑑定の依頼と言うことだったがこの剣を譲ってもらうことはできないだろうか?」
「その長剣は差し上げます」

 俺の言葉に二人が息を飲む。

「その代わりと言っては何ですが、この街の代官に私をご紹介願いたいのです」
「理由をお聞きしてもよろしいかな?」

 驚きの表情を浮かべていたギルド長の顔が瞬時に真顔へ戻り、鋭い視線が俺に向けられた。
 成人まもない若造から地方都市の代官に引き合わせて欲しいと言われて、『はい、そうですか』とはいかないよな。
 それに、どこの馬の骨とも分からない男を要人に近付けたくないのも分かる。

「お話した通り、私は父の跡を継げませんでしたが商人としてやっていくつもりです。その上でこちらの代官様の面識を得たいというだけです」

「なるほど」

 商人が成り上がるために権力者や有力者とパイプを持つのは地球も異世界も同じようだ。俺の嘘を簡単に信じてくれた。