「失踪者……」

 ロッテがそれだけを口にして祈りをやめた。

「錬金工房の中で解体して森の中に捨てちゃえば証拠も残らないでしょ」
「人間を解体するのはちょっと遠慮させてくれ」

 躊躇を示す俺の傍らでロッテが激しく首を縦に振って同意している。

「意気地なしね。じゃあ、言語関係のスキルを取り上げて放り出しましょう。気がふれたと思われて、すぐに交代要員が送られてくるでしょう」
「御代官様は街にとって必要な方なんです」

 ロッテの主張も一理ある。
 悪代官には腹が立つが、無闇に優秀な人材を排除する必要もない。

「交代要員に問題が無ければそれでもいいが、もっと悪くなる危険性もある」

「じゃあ、どうするのよ」
「金品なり希少な魔道具を賄賂にして言うことをきかせるのと、弱みを握って言うことをきかせる。この二重の束縛が最善の手立てじゃないか?」

 だが、具体的なプランはない。

「弱みは?」
「これから探す。無ければ作ればいい」
「騎士団は?」
「幸い、以前からいる第三・四部隊はまともだ」

『騎士団長と第一・二部隊にはご退場願おう』、というセリフは口にしなかったがユリアーナには伝わったようだ。

「いいわ、たっくんの案を採用しましょう」

 女神の口元に笑みが浮かんだ。