「命が惜しい」
「冷静になって考えて。元の世界に戻るにはあたしが力を取り戻すしか方法はないの。そして、力を取り戻す方法はたった一つ。この世界に散った神聖石を回収すること」
「二人きりで何ができるんだ?」

 現実を見つめようぜ。力を失った女神と高校生のコンビだ。

「言ったでしょ。召喚された者は特別なスキルを手に入れられるって」
「この世界で戦い抜けるだけの力が俺の中に備わっているとでも言うのか?」
「あたしが選んだ助手よ。自信をもってちょうだ」

 マジか! 口車に乗せられている気もするが……、チート能力があるなら美少女と二人きりというのも悪くはない。

 思案する俺の耳に女神様の魅惑的な声が響く。

「ミッションコンプリートのあかつきには、元の世界に戻るときに魔法を使えるようにしてあげるなり、この世界で面白おかしく生きるなり、好きな方を選ばせてあげるわよ」

 文明社会に戻ってイジメた連中に仕返しをする未来も捨てがたいが、中世ヨーロッパの領主のように贅沢三昧は得難い魅力があるな。
 俺の中で天秤が振り切った。