俺はアンデッド・オーガの素材だけを自分のものとし、オーガ八体の素材は防衛戦に参加した冒険者たちへ提供した。
 見返りはラタの街の情報である。

「有用な情報は聞けたの?」

 孤児院へ向かう道すがら、ユリアーナが聞いてきた。

「助祭の詳しい情報はなかったが、悪代官と騎士団については面白い話が聞けた」

 意外なことに代官としての職務はまっとうしていた。それどころか、真面目で熱心な仕事ぶりを評価する話が幾つも出てきて驚かされた。
 そして予想通り、仕事ぶりが霞むほどの悪評が次々と飛び出す。

 曰く、

『人の性癖に口を出すつもりはないが、あれだけは許せねえ』
『あいつは人間のクズだ!』
『間違いなく行方不明者がでるぜ』

 悪代官に関する情報収集はそんな前置きから始まった。
 ロッテに言い寄っている話も十分に有名だったが同様の話が次々と語られた。

 代官という地位と金銭を武器に、あまり裕福でない家庭の年端もいかない少女たちを狙っていたようだ。
 そんな潜在的な被害者集団のなかで行方不明者に最も近いのが親のいないロッテと言うことだった。

 そのことを二人に伝えるとユリアーナは「クズね」とバッサリと切って捨て、ロッテはすがるような目で俺を見上げた。

「御代官様とお話をしてくれるんですよね?」
「安心しろ。ロッテは俺たちが引き取ったんだ。誰にも手出しさせやしない」
「ありがとうございます」

 明るい声と笑顔が返ってきた。

「それに、悪代官にはご退場願うつもりだ」

 ロッテの表情が笑顔から驚きに変わった。

「あのー、御代官様も根は悪人じゃありませんから、あまり酷いことは……」

 実行力のあるロリ野郎は、それだけで十分に悪人だ。

「ロッテちゃん、誘拐されそうになったんじゃないの?」
「それはまあ……」
「孤児院に迷惑がかかるようなことにはしないから安心していい」
「え?」

 ロッテが驚いたように俺を見た。