「ご苦労だった。ギルドを通じ、改めて騎士団より感謝の気持ちを込めて追加報酬が払われるだろう」

 悪人顔の騎士はそう言うと、後ろを振り返って若い騎士たちに指示を出す。

「お前たち、魔物の死体を回収しろ」

 悪人顔の騎士の号令一下、若い騎士たちが地面に転がっているオーガの下へと駆け寄る。

「酷いありさまだな」

 若い騎士たちはオーガの死体を見ると一様に顔をしかめた。
 そして次々と聞こえてくる不満の声。

「うへえ、皮膚なんて半部以上がただれているぞ」
「皮膚は使い物にならんが、角と牙は使えそうなのがせめてもの救いか」

 加減したはずなのだが、オーガの皮膚は火魔法による火傷と爆風による裂傷でボロボロだった。

「オーガの皮膚なんて何につかうんだ?」

 戻ってきたばかりのロッテに尋ねた。

「オーガの素材は魔力を流すことで自動修復する特性があるんですけど、状態が悪いとその特性が現れないんです」

 オーガの角と牙、皮膚を素材にして作成された代物は魔力を流すことで硬化させたり、細かな傷なら修復もできたりする。この特性を活かして皮膚はマントや防具の裏地として、角や牙は解体用のナイフや短剣の素材として利用されているそうだ。
 なるほど、火傷した状態じゃ価値も落ちるか。

「待ってください隊長さん。このオーガは俺たちじゃなく、そこの兄さんが倒したもんだ。所有権は兄さんたちにある」

 年配の冒険者がそう言うと隊長が俺に向かって面倒くさそうに聞いた。

「お前も冒険者なんだろ?」
「俺は旅の商人です」
「商人?」
「兄ちゃん、商人だったのか……」

 悪人顔の隊長と年配の冒険者が同時に声を上げた。