「どうしたの?」
「いや、宝石のようなものを想像していたから……」

 笑顔に見とれていたとは言えない。

「がっかりした?」
「いや、とても綺麗だと思う」
「あら、この石の美しさが分かる人がいて嬉しいわ」

 ほほ笑む彼女から、つい、視線をそらしてしまった。
 気恥ずかしさから話もそらす。

「ところでその石、アンデッド・オーガの頭の中にあったぞ」

 魔物が所有しているというのもおかしな話だと思っていたが、頭部にあったのも気になる。

「直撃だったようね」
「何の話だ?」
「前に言ったでしょ。神聖石を地上に落としたって」
「まさか……、落とした石がオーガの死体に直撃したのか? それでアンデッド化したとかじゃないだろうな」
「その可能性もあるけ……」

 そう言って思案げな表情を浮かべたユリアーナに聞く。

「聞くのも怖いが、神聖石が直撃したのが原因でオーガが死亡して、さらにその石の力でアンデッド化したなんてことは?」
「かもしれないわね」

 かもしれないわね、じゃねえ!

「それって、アンデッド・オーガも被害者じゃないのか?」
「もしそうなら気の毒なことをしたわ」
「お前、もしかして邪神なんじゃないか?」
「言うにことかいて邪神はないでしょ、邪神は!」

 先程までドキドキさせられた愛らしい笑顔はそこにはなかった。あるのは失態をごまかそうとする子どもの顔だ。
 そのとき、冒険者たちの間から声が上がった。

「騎士団の連中だ」
「ようやくお出ましかよ」

 歓迎していないのがありありと伝わってくる。
 声のする方に視線を向けると、騎乗した十数名の騎士たちがこちらへと向かってくるところだった。