派手な攻撃魔法とオーガを瞬殺した事実に、住民たちだけでなく、冒険者と騎士団もが驚き言葉を失った。
 驚いて思考停止した反応も嫌いじゃない。

 そんなことを思いながら仕留めたオーガへ視線を向ける。
 焼けただれたアンデッド・オーガの顎がケロイド状の皮膚と共に崩れ落ちた。

 焼死体から放たれる焦げた肉の臭いと、鼻を突くような異臭が辺りに漂う。
 アンデッド・オーガの焼死体から目を背けると、今度は内臓の大半を食い荒らされたオーガの死体が目に飛び込んできた。

 ここにいちゃダメだ。吐く、このままここにいたら間違いなくリバースする。冒険者たちと交戦中のオーガへ視線を巡らせると、バリケードを乗り越える寸前だったオーガが、頭部を炎に包まれて転がり落ちるところだった。

 心臓も数本の槍で貫かれており、絶命間近であることが知れる。
 最前線を突破しようとしていたオーガたちが、警戒するようにバリケードからわずかに距離をとった。

 さらに、最後方にいた二体のオーガが大きく後退する。
 撤退するつもりか?

 見逃すつもりはないがバリケードから離れてくれたのは好都合だった。
 オーガと冒険者が直線状に並ぶのを避けるため、俺はオーガたちの側面へと回り込む。

「加勢する! 爆風に気を付けてくれ!」
「待て、待ってくれ!」
「伏せろ! 伏せるんだ!」

 俺の声が届いたのか、攻撃魔法を撃ちだそうと左手を突きだした動作に反応したのかは分からないが、冒険者たちが一斉にバリケードの内側に身を隠した。

 狙いは最後尾にいる二体のオーガとバリケードに取り付こうとしている五体のオーガとの間。
 放つ魔法は爆裂系の火魔法。