声の方を振り返ると年配の騎士が歩いてくるところだった。

「光魔法を使える魔術師が不足していると聞いたので駆け付けました」

 俺たちが旅の商人であることと、妹であるユリアーナが光魔法の使い手であることを年配の騎士に告げた。

「光魔法が使える魔術師は歓迎だが、子どもを最前線に行かせる訳にはいかない。騎士団の後方で待機していなさい」

 騎士団が築いたバリケードのさらに後方にある幕舎を示した。

「教会に運ばれてきた瀕死の冒険者に頼まれたんです。『最前線の怪我人を少しでも救って欲しい』って」
「ありがとう。でも、気持ちだけで十分だ。戦うのは我々大人に任せなさい」

 だめだ、人が良すぎる。そして話が通じなさすぎる。

「いま、俺たちがあそこに行けば前線は維持できます」

 七体のオーガ相手に次第に押され気味になってきた冒険者たちの防衛ラインを親指で示した。
 騎士が言葉に詰まる。

「それに俺たちは冒険者ギルドに派遣されて来た訳じゃありません。純粋に街を守りたいから立ち上がったんです。どこで戦うかは俺たちに選択権があるはずです」
「ギルドの依頼じゃなかったのか……」