思いもよらぬ幸運に鼓動が早まる。
 手が震える。
 自分でも緊張しているのが分かった。

 いますぐ行動を起こすつもりなのだろうか、とユリアーナを見つめると彼女は穏やかな笑みを浮かべた。

「穏便に返してもらう算段も考えないとならないし、細かいことは後で話し合いましょう」
「分かった」

 神聖教会の助祭だからといって、話し合いをするつもりということはないよな。
 乱暴に扉が開かれる音で俺の思考が中断される。視線を巡らせると、そこには傷だらけの冒険者と衛兵がいた。
 どうやら新たな怪我人たちが運び込まれてきたようだ。

「怪我人だ!」
「重傷者なんだ! 優先してくれ!」
「冒険者と衛兵に怪我人が続出している! 頼む! 光魔法が使える魔術師を門へ派遣してくれ!」

 そんな悲痛な叫びと共に次々と怪我人が運び込まれてくる。

「ユリアーナ、ここは任せていいか?」
「まさかアンデッド・オーガを仕留めに行くつもり?」
「元を断たないとキリがないだろ」
「錬金工房を頼らずに戦えるの?」

 作成した魔道具だけでアンデッド・オーガを倒せるかは分からないが、錬金工房を使えば楽に倒せる自信はある。だが、錬金工房の能力を知られるのは避けたい。
 特に生きた魔物を百メートル以上離れた位置から収納できることは秘匿する必要がある。