重傷を負ったシスター・アンジェラと子どもたちは神聖教会に運び込まれてるとのことだったので、若いシスターに説教されている最中のロッテを伴って教会へと向かうことにした。
 大通りをしばらく走ると、いままで黙り込んでいたロッテが泣き出しそうな顔で俺を見た。

「シスター・アンジェラを助けてくれますよね?」

 答えたのはユリアーナ。

「シスターや子どもたちだけじゃなく、他にも怪我人は大勢いるんでしょ? 助けられるなら全員助けるわ」

 孤児院を出るときは、『あまり目立つ真似はしたくないのよね』と言っていたユリアーナだが、力をセーブするつもりはないようだ。
 ロッテが再び黙り込んだので、彼女の気を紛らわすついでに訊く。

「シスターが孤児院の子どもと一緒に、魔物の出現するような森に出掛けるのは普通のことなのか?」
「割とよくありますよ。住民たちでお金を出し合って冒険者を護衛に雇うんです」

 これに孤児院のシスターや子どもたちも同行させてもらっていた。森の浅いところにある薬草や野草を採取するのは日常のことだという。
 採取した薬草を錬金術師ギルドに卸すことで貴重な臨時収入となるし、果物や野草は普段の食卓に上る。

「年長者の何人かは弓や槍を使えるので、鳥やウサギを狩ることもあるんです」

 随分とたくましいな。
 年に何人かの死人や怪我人がでるのは織り込み済みのことだが、それでもここ数年は孤児院の人間が被害に遭うことはなかった。例年にない甚大な被害で他のシスターたちも気が動転してしまったのだろう。