「少女趣味の悪代官を黙らせる程度に価値のある魔道具を、眼の前に並べるくらい造作もないことです」
「差し出がましいようですが、希少な品や高価な品をお持ちになっていることはあまり口にしない方がよろしいですよ」
「ここだけのお話です」
「そうですね、私も忘れることにいたしましょう」

 席を立つ直前、俺は街中で気になったことを訊ねた。

「教会の付近がとても賑やかでしたが何かあるのでしょうか?」

 この街の住人であるロッテですら驚くくらいに教会の前に人が集まっていた。それも、老若男女を問わずに教会の外からお祈りを捧げていた。

「昨日赴任していらした助祭様が、とても徳の高い方で着任早々、数々の奇跡を起こされたとか。それで一目見ようと大勢の住民が集まっています」

 ロッテの脱走後に着任したのか。
 廊下を走る音が急速に大きくなり、勢いよく扉が開かれると若いシスターが廊下で聞き耳を立てていた子どもたちと一緒に院長室に転がり込んできた。

「院長! 大変です!」
「何事ですか」
「魔物です! 魔物に襲われてシスター・アンジェラが重傷です! 一緒に薬草採取に森に行った子どもたちも、怪我をしたと知らせがありました!」

 おいおい。
 この街じゃ、シスターが子どもと一緒に魔物のいる森に出掛けるのかよ。