「盗賊の証言と概ね一致しています」

 若い騎士が中年の騎士に耳打ちした。

「盗品はどこだ」
「馬車の中に」
「盗賊たちの盗品をどこに隠したと聞いているんだ!」
「ですから、馬車の中に積んであります」
「盗賊たちの証言から、盗品があの十倍はある事は分かっているんだ!」

 盗賊たちめ、よけいなことを言いやがって。

「全部を持ちだすことはできませんでしたから、目ぼしいものだけを馬車に積んで残りは盗賊たちのアジトに置いてきました」

 中年オヤジがいやらしい笑みを浮かべた。

「盗品を放置してきたと言うことは、所有権を放棄したということになるな」
「おっしゃる通りです」

 中年オヤジの問いに若い騎士が即答した。

 なるほど、そう言うことか。
 盗品をどこかに隠してあったとしたら、それは所有権放棄とみなして着服するつもりなのか。腐ってやがる。
 中年オヤジは満足げにうなずいて俺に言う。

「そのアジトの検分も必要だな。アジトに案内をしろ」
「ここから馬車で半日以上かるので、いまから行っても到着するのは夜中になります。案内は明日で構いませんか?」

 ロッテの問題が解決したら、こんな街はさっさとおさらばしよう。

「明日の朝一番で見習い騎士を何人か集めておきます」

 若い騎士の言葉に中年オヤジがうなずくと俺に向きなおり、

「明日朝一番で騎士団に出頭しろ。遅れたら拘束するからそのつもりでいろよ」

 口角をつり上げた顔でそう告げた。