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「こんにちわー」
御者席のロッテが門番に手を振ると、門番がもの凄い勢いでこちらに走りだした。
「知り合いか?」
「何年か前の孤児院の出身者なんです。一緒に過ごしたことはありませんが、ときどき孤児院に食べ物をもって顔を出してくれるんですよ」
門番が駆け寄ってきたので馬車を止めると、
「ロッテちゃん、どこに行ってたんだ?」
そう言うと彼女の隣に座っていた俺をもの凄い形相で睨み付けた。
「どこって? あ!」
ロッテが小さく叫んだ。
そうだった……、彼女は行商人の馬車の積荷にこっそり隠れて街から逃げだしたんだ。
「その男は誰だ?」
門番が俺に向けた眼差しは、完全に不審者を見る目だ。
「行商人さんの馬車で眠ってしまって、気付いたら街の外だったんですよー」
「行商人の馬車で?」
そんな間抜けな言い訳が通用するわけないだろ! ロッテが街の外にいる言い訳を考えておけばよかった。
「そうなんですよー」
「ロッテちゃんらしいな」
二人揃って笑いだした。
ロッテ、お前って周りの人からどんな風に見られているんだ?
「それでそっちの男は?」
門番の視線が俺へと移る。
「街道で途方に暮れていたところを、こちらの親切なご兄妹に助けて頂いたんです」
「兄妹?」
「ハーイ」
衛兵が疑惑の視線を再び俺に向けるのと同時に、相変わらずのゴスロリ姿のユリアーナが馬車から顔を出した。
「ハ、ハーイ」
釣られて鼻の下を伸ばす衛兵にロッテが説明をする。
「こちらのご兄弟は旅の商人さんなんです」
「奴隷商人か?」
門番の言葉に俺が即答する。
「違いますよ、普通の商人です。檻馬車の中は、ここから半日ほど行ったところに巣食っていた盗賊たちです」
「盗賊だって!」
「全部で三十一人います」
「本当ですよ。だから騎士団の方を呼んできてもらえますか?」
ロッテが助け舟をだした。