「そんな便利な指輪があと二つある」

 一つをユリアーナに指輪を差しだす。
 これで属性魔法のスキルがない俺とリーゼロッテは魔道具の力を借りて属性魔法が使えるようになる。ユリアーナは失われた女神の力に頼らずに強力な属性魔法が使えるようになる。

「でも、よく同じ形のものが三つもあったわね」
「形状を変えた。元の持ち主の関係者が現れて、盗賊に奪われた品だなんて騒がれても嫌だからな」

 犯罪組織が盗んだ宝石を加工しなおして足がつかないようにするのと同じだ。

「この世界じゃ、盗賊が奪った品の所有権が討伐者に移るのは普通のことよ」
「俺の気分の問題だ」

 ユリアーナの『小心者ね』との言葉を聞かなかったことにして話題を変える。

「そんなことよりも、試しみなくていいのか?」

 結果。

「予想通りだ」

 口では平静を装っているが、内心では今にも歓喜の叫び声を上げそうだ。対してユリアーナは驚愕を隠せずにいる。
 リーゼロッテに至っては殻を閉ざしたようにブツブツとなにかつぶやいて自分の世界に入り込んでいた。

「予想通りって……、これを予想していたっていうの?」

 錬金工房の主である俺だけが予想できたことなのだろう。
 事実、魔道具を使用するまで、ユリアーナでさえ予想していなかったのがその表情と口調から分かる。

 指輪に付与した魔法スキルは地・水・火・風の四つの属性魔法のスキル。
 属性魔石と違い魔法スキルの付与では、地・水・火・風それぞれの属性で複数の魔法が使用できた。