次の目的地向かうにしても事前準備は必要だ。錬金工房から出した椅子を二人に勧めテーブルの上に作成し終えたばかりの装飾品を並べる。

「リーゼロッテは魔法が使えるのか?」
「いえ、使えません」
「そんな君に朗報だ。この指輪をはめるだけで、誰でも属性魔法が使えるようになる」

 テーブルの上から白金の指輪を手に取り、彼女の指にはめた。

「あたし、お金なんて持ってません!」
「お金は要らない。対価は知識。俺たちの知らない事を色々と教えてく欲しい」

 湧きあがった邪な想像を頭の片隅に追いやる。

「え!」
「ちょっと!」

 怯えた表情でリーゼロッテが手を引っ込め、ユリアーナが怒りの形相でテーブルを叩くのが同時だった。

「どうした?」
「いたいけな少女に何を要求するつもりだったの?」

 立ち上ったユリアーナが、椅子の上で震えているリーゼロッテを抱きかかえた。

「誤解しないでくれ、やましい気持ちもなければ、下心もない。本当だ」

 一瞬だけよぎったが口にはだしていないからセーフだ。

「いま、ものすごくいやらしそうな顔をしていたわよ」
「御代官様を思いだしました」

 悪徳代官と一緒かよ! 酷い言われようだな。

「誤解だ。その指輪の説明を聞いてリーゼロッテが驚く顔を想像しただけだ」
「本当でしょうね?」
「女神様に誓う」

 左手を上げてドラマで見た宣誓のポーズをした。