馬車の中に隠れていた少女をベッドの上に横たえた。年の頃は十二、三歳。北欧系の彫りの深い顔立ちで、きめの細かい白い肌と淡い水色の髪が目を惹く。
 端的に言って美少女だ。どことなくホンワカとした感じのする女の子で保護欲をそそられる。ただし、服装はこの上なくみすぼらしい。ツギハギどころが、ところどころ穴の開いたボロ服を着ていた。
 ベッドの上で眠っている少女を覗き込んでいたユリアーナが不意に顔を上げる。

「何で眠っているのよ」

 疑いの眼差しが俺に向けられた。
 錬金工房内の時間を停止せず、隠れていた少女が一晩中怯え、泣きつかれて眠ってしまったと思われたようだ。
 気持ちは分かる。俺も少女が眠っていることが信じられない。

「時間は停止していた」
「もしそうなら、相当図太いわよ、この娘」

 つまり、盗賊に馬車を襲われ仲間が皆殺しにされる中、積荷の中で息を潜めて隠れていたのではなく、隠れて居眠りをしていたことになる。
 ユリアーナが寝息を立てる少女に再び向きなる。

「もしもーし。お嬢さん、起きてください」
「う、ん……」