使用できる魔法は元の使用者が使うことができた魔法。つまり、より優れた魔術師から魔法スキルを剥奪すれば、魔道具の使用者は労せずに優れた魔法を使えることになる。

「この辺りに高位の魔法スキルを持ったドラゴンとかいないかな?」

 スキルを剥奪してアイテムに付与できれば、魔法のド素人でも一夜にして世界最高峰の魔術師になれる。
 胸の高鳴りが止まらない。

「探しましょう、ドラゴン! 最強クラスの属性魔法を自由自在に使えれば神聖石の回収も楽になるわね!」

 ユリアーナの瞳が輝く。

「罪深い罪人や悪しき魔物からスキルを奪いましょう。何も魔法スキルに限定する必要はないわ。他に何ができるのか、どんどん実験しましょう!」

 一理ある。罪人や魔物から奪うなら心も痛まない。
 俺は魔道具による己と彼女の強化プランに思いを馳せようとした。だが、昨夜から気になっていたことが不意に脳裏をよぎる。
『楽しくなってきたわー』、と妙に浮かれているユリアーナに言う。

「ところで、昨夜から気になっていたんだが……、入り口のところあった馬車を、中に隠れている盗賊ごと収納しただろ?」
「それがどうしたの?」
「隠れていた場所が積荷の中なんだ」
「は?」
「女の子なんだよ。何て言うか、村娘っぽい恰好をしているんだ。もしかしたら襲われた行商人の同行者じゃないかな?」

 盗賊に襲われたときに積荷の中に隠れた可能性……。状況からしてその線がかなり濃厚な気がしてきた。

「もっと早く言いなさいよ。ともかく、その女の子を一旦出しましょう」

 その顔に浮かれた様子はもうなかった。