「その前に盗賊のお宝ね」

 俺たちはアジトの奥にある収納庫へと向かった。

「随分と羽振りのいい盗賊だな」
「街道沿いだし、隊商やら行商人が幾つも往来していたんでしょ」
「本当にこれを全部俺たちが貰っても大丈夫なのか?」

 無造作に積み上げられた盗品と思しき品物の山は、一般的な馬車十台分はありそうな量だ。

「尋問した盗賊たちも言ってたじゃないの、盗品は盗賊を討伐した者に所有権が移るって」
「確かに言っていたな」
「当面の生活費も必要でしょ? それに街に到着したときに所持金が無いというのもわびしいものがあわよー」
「郷に入っては郷に従え、とも言うしな」

 移動手段としての馬車も欲しいし、武器や防具にしても最低限の装備は整えておきたい。ここは盗賊の資産をありがたく使わせもらうとしよう。
 武器や防具と同様、部屋に積み上げらえていた品物を錬金工房へと収納した。

「次は武器と防具ね」

 盗品の中から真っ先に貨幣を寄り分けて、武器と防具の作製に移る。

「武器と防具は盗賊を襲撃のときに作成したモノじゃダメなのか?」

 自分が身に着けている武器と防具を見る。
 昨夜、盗賊のアジトを襲撃するにあたって、俺たちを襲った盗賊たちから剥ぎ取った剣を再加工し、刀身が黒塗りの日本刀とショートソード、さらに数振りのコンバットナイフを作成していた。
 防具も同様に一般的な革鎧や籠手など一式をあつらえてある。

「予備と飛び道具が欲しいわね」
「完了だ」

 予備の武器と防具、弓矢を作成したことを告げる。

「それと、魔石があったでしょ?」

 盗品の中にあった魔石は全部で五つ。
 火属性の魔石が二つに水属性の魔石が一つ。土属性の魔石が一つ、風属性の魔石が一つ。

 これにゴブリンが持っていた闇属性の魔石が二つ。
 これが俺たちの手持ちの魔石だ。

「それで魔道具を作りましょう」

 ユリアーナの弾む声が洞窟内に木霊した。