「たっくん? 唐突に何を言いだすの?」
「この世界での俺の名だ。神薙とは神を薙ぐこと。修羅とは最強の鬼。俺は神をも斬り割く最強の鬼となる! 改めて名乗ろう! 断罪者、神薙修羅だ!」
「色々と間違っているけど突っ込まないであげる」

 ユリアーナは俺を気遣うようにささやくと盗賊たちに向きなおった。

「あ、あたしのことは気にしないで。悪人に名乗る名前は持ち合わせてないから」
「ゴチャゴチャとうるせー!」
「武器も持たずに俺たちと戦う気か? 奥に武器があるんだろ? 取ってこいよ。それくらいの時間は待ってやるぜ」

 背筋に電流が走るような錯覚を覚えた。自分らしくない言葉遣いに、えも言われぬ快感が襲う。
 隙を見つけたつもりなのだろう、三人の男女が奥へと駆けだした。彼らが通路の陰に差しかかる直前に錬金工房で収納する。
 これでいくら待っても奥から武器を持って戻る者はいない。

「来るわよ」

 ユリアーナの警告にうなずきながら、飛んでくる投げナイフを収納する。

「やった! え……?」

 仕留めたと思ったか?
 女の顔から笑みが消え、顔を蒼ざめさせる。