「さっさと外に行きやがれ!」

 大柄な男に一喝されるとよろめきながら扉へと近付いてきた。そして、扉へと手を掛ける。だが、扉が開けられることはなかった。
 その直前に錬金工房へ収納したからだ。
 これで九人目。部屋にはあと十一人。

「おい、随分と奥にしけ込んでねえか?」
「確かに、おかしいぜ……」
「男だけでしけ込んだりしねえよな……」

 バカ騒ぎしていた連中の笑い声が消えた。

「さすがに半数近くが消えれば気付くか」
「男ばかり収納したのがまずかったわね。もう少し女も収納していれば、奥にしけ込んだと思ってもらえたかもね」

 それでも予定に変更はない。

「誰だ? 隠れてねえで出てきやがれ!」

 そう叫んだ男が辺りに注意を払いながら、立てかけてある剣へと手を伸ばした。
 次の瞬間、男の手が空を切る。男は剣があるはずの空間を振り向くと、驚いた表情を浮かべて動きを止めた。
 残念だったな、剣は錬金工房の中だよ。
 俺は目に付く範囲の武器と盗賊が装備している武器を収納する。

「武器がねえ!」
「俺の剣もだ!」

 あちらこちらで、驚きの声が上がった。

「武器庫だ! 奥に武器を取りに行くぞ!」

 駆けだした男を大勢の眼前で収納する。
 短い悲鳴が上がった。

「消えた!」
「何で消えたんだよ!」
「逃げろ! ここはヤバい!」

 盗賊たちがこちらに向かって駆けだした。恐怖の形相を浮かべた数人の男女が一目散に向かってくる。先頭の男が扉に手を駆けようとしたところで、扉ごと室内へと蹴り戻した。

「ウギャッ」

 先頭の男がおかしな悲鳴を上げ、後続の二人を巻き込む形で扉と一緒になって床の上を二度、三度と跳ねた。部屋のなかに一瞬の静寂が訪れたが、それを一際大柄な男の怒声が破る。

「誰だ、てめえら!」
「神薙修羅」