「そろそろ馬を降りて歩きましょう」

 馬を並走させるユリアーナの声が馬蹄に交じって響いた。俺は彼女の言葉にうなずいて馬に語りかける。

「よし、もういいぞ。止まってくれ」
「いい子ねー。他の馬よりもたくさんの飼葉を食べさせてあげるからね」

 盗賊から剥ぎ取った公用語スキルを馬に付与することで、乗馬の経験がない俺たちでも容易く馬をあつかえた。

「飼葉は村か街に着いたら買ってやるからな」
「盗賊のアジトに行けば飼葉くらいあるわよねー」

 すると小さないななきを上げて二頭の馬が大きくうなずいた。
 俺は二頭の馬を錬金工房に収納し、盗賊のアジトがあるという岩場に目を凝らす。
 アジトまで一キロメートル余。身体強化で視力を強化しても、月明りの下では有用な情報は得られないか。
 諦める俺の隣でユリアーナが言う。

「二十五人いるわ」
「あの盗賊、嘘を吐いたのか?」

 尋問した盗賊の情報ではアジトにいる仲間は二十四人だと言っていた。

「頭悪そうだったし、単純に人数を数え間違えただけじゃないの」

 そう言いなが彼女は月明りの岩場に目を凝らす。