「ユリアーナ、提案と言うか相談がある」
「歩くのが嫌だとか言わないでよ。盗賊を掴まえて騎士団に突きだしたら報奨金が貰えるのよ」

 先程の尋問で、盗賊団のボスを含めた五人の盗賊たちに賞金がかかっていることを聞きだしていた。さらに盗賊が盗んだ財産は討伐した者に所有権が移ることも確認済みだ。

「先立つものは必要だし、善行を積んで大金を得られるんだから反対するつもりはない」
「じゃあ、歩きましょう」
「盗賊の持っているスキル」

 そこで言葉を切ると、案の定ユリアーナが即座に反応した。

「何か面白そうなスキルでもあったの?」
「全員、公用語のスキルを持っていた」
「当たり前じゃない」
「そのスキルを馬に付けられないかな?」

 声帯が違うからしゃべることはできなくても、こちらの命令を正しく理解することができるようになるかもしれない。
 理解できれば俺たちでも馬に乗れるはずだ。
 公用語を理解できなくなった盗賊の末路を想像すると若干の罪悪感を覚えるが、これも因果応報と諦めてもらおう。
 振り返ったユリアーナの口元に笑みが浮かぶ。

「盗賊が公用語を理解できるよりも、馬が公用語を理解できる方がずっと価値があるわ」

 予想はしていたが迷いがない。

「言いだしておいて何だが、反対しないんだな」
「公用語スキルを失った盗賊には、女神であるあたしから感謝の祈りを贈りましょう」

 胸の前で両手を組むと静かに目を閉じる。

「それだけ?」
「過分な同情は禁物よ」

 俺は盗賊の公用語語スキルの剥奪を試みることにした。