「さっき、飛行能力があるとか言ってたろ? なら、俺を抱えて飛べば魔物に遭遇しなくてすむんじゃないのか?」
「空を飛ぶ魔物だっているわよ。それにたっくんを抱えて飛ぶなんて無理よ。今のあたしが持っているのは低レベルの飛行能力だもの」
「でも、上空から街を探すくらいはできるんじゃないのか?」

 大まかな方向が分かるだけでも、無闇に森の中を歩き回るより安全で確実だ。

「エッチ」
「何を言っているんだ?」
「あたしを宙に浮かせて、下から覗くつもりなんでしょ」

 恥ずかしそうに頬を染めるユリアーナに俺の心臓が再び大きく跳ねた。

「しないって! そんなことする訳ないだろ!」
「ふーん。怪しい……」

 ほんのりと頬を染めた彼女が上目遣いで見つめる。
 疑惑の眼差しだと分かっていても、心臓がまるで早鐘を打つように高鳴る。

「違うから。やましいことは考えてないからな。俺は純粋にお互いの弱点を補えあればと考えただけだから」

 自分でもしどろもどろになっているのが分かる。

「そう言うことにしておいてあげる」
「そう言うこと、ってなんだよ」

 なおも抗弁しようとする俺の言葉を遮る。

「この話はここまでよ。少し離れているけど雑魚が集まってきたわ」
「魔物か?」

 ユリアーナが神妙な顔でうなずいた。