「神界にいればお腹が空くこともないわよ。そもそも不老不死だからね」

 違った。今の状況が特殊なのか。

「もしかして、人間界に降臨した今の状態だと、怪我したり、その、死んだりするのか?」
「そうなるかしら」

 どこか困ったような曖昧な微笑みを浮かべた。彼女の表情に俺は言葉を詰まらせる。

「自己犠牲とかじゃないから。その、誰かがやらないとならないでしょ?」

 慌てたユリアーナが不意に視線を逸らした。

「……元気出せよ。俺も頑張るからさ」
「ありがとう」

 世界を守るために頑張る少女。眼前の健気な少女の味方が自分だけだと思うと、胸が締め付けられるような気がした。

「その、なんだ……俺がここにいる状況には納得できないところもあるけど、ユリアーナがそんな危険を冒してまで頑張ってるんだ。男の俺がいつまでもクダクダ言っていられないかならな」
「たっくんのそういうところ、大好きよ」

 不意討ちの笑みに心臓が大きく波打つ。

「お、おう」

 ゆっくりと歩きだした彼女の背中を視線で追う。

「それじゃ、そろそろ身体強化の練習をしましょうか」

 そう言って不意に振り返った。

「錬金工房が十分に戦力になることは分かったけど、魔物が脅威であることは変わりないわ。自分の身を守るうえでも身体強化は重要よ」
「手を抜くつもりはないから安心してくれ」

 当面は二人の能力を活かして戦う。
 本格的に武器や防具、アイテムが作成できるようになったら、それぞれの弱点を補うアイテムを作成する。隙が少なくなれば生存確率は上がるはずだ。
 そんなことを考えた瞬間、俺の中で何かが閃いた。