能力の詳細は追々確認するにしても、現状の戦力把握は必要だよな。俺は現時点で自分が理解している範囲の能力を伝えることにした。

「錬金工房の中を幾つもの空間に区切って、その空間毎に時間を止めることも加速することもできるし、自在に重力を制御することもできる」

 錬金工房の中でクマが宇宙遊泳をするようにジタバタしている様子を彼女に告げた。

「自由自在ね」

 どこか感情が消え失せたような声のトーンだ。

「あと、取り込んだモノの鑑定と解体ができる」
「至れり尽くせりのスキルで心強いわ」

 乾いた笑いを漏らしている彼女に聞く。

「異空間収納の上位互換って感じなのかな?」
「まったくの別ものよ。異空間収納は魔力量に応じて収納できる重量が増し、内部の時間は停止している状態。機能はそれだけよ」

 異空間収納との違いを理解した俺は錬金部分について触れた。

「錬金工房のスキルで何か作成するには、錬金工房に素材を取り込んでその中で作成するしかないらしい」
「ちょっと、信じられないスキルね……」

 ユリアーナがどこか疲れ切ったような表情を浮かべて頭を振った。

「百聞は一見にしかず、だ。早速試しに何か作成してみよう」

 俺自身、錬金工房の力を試してみたくて仕方がなかったのもあって提案するが即座に反対された。

「錬金術のようにどんなものが作成できるのかも知りたいけど、真っ先に知りたいのは攻撃手段としての錬金工房の能力よ」
 
 もっともだ。
 優先順位は生き残るのに最も必要な能力の確認なのは間違いない。

「それじゃ、あの大岩とこの硬い木を同時に取り込んでみる」

 数メートル先にあった直径一メートル程の大岩と傍らに生えていた大木が瞬時に消え、大木に巻き付いていた蔦が地面に落ちた。
 バランスを失なった鳥が、なんとか空中で姿勢を正して飛び去って行く。
 それを目で追っていたユリアーナが、

「見事に消えたわね」

 大木が生えていた場所に空いた大きな穴を、呆れたような表情で覗き込んだ。