影に視線を向けると巨大な黒毛の猛獣と目が合う。
「魔物?」
「魔物じゃないわ。普通に猛獣よ」
後退りながら『たっくん、頑張って』、とささやくような声援。
「いやいや、無理だろ。動物園でも見たヒグマの三倍はあるぞ、あれ。だいたい武器の一つもないのにどうやって戦うんだよ」
「錬金工房で武器は作れないの?」
「無理だ。使い方が分からない」
「魔力で身体強化を図りましょう。武器はその辺の岩で大丈夫なんじゃないかしら? あ、怪我しても光魔法で治してあげるから安心して」
明るく振舞っているが声が切迫している。
これはかなりヤバい状況だ。
「属性魔法が使えるって言ったよな? 魔法でチャチャっと片付けられないのか?」
「それこそ無理よ。力がほとんど失われているんだから、属性魔法なんて申し訳程度のことしかできないわ」
「それじゃ怪我したって直せないんじゃないのか?」
「それは大丈夫。光魔法だけは健在よ」
どこまで信じていいのか怪しいな。だが、いまはそんなことを気にしている場合じゃない。
突如、猛獣が駆けだした。
速い! 距離が一気に詰まる。まずい! 百メートルを切った!
「魔力による身体強化ってどうやるんだ? 身体強化の方法を教えてくれ!」
俺の言葉が終わらないうちに、彼女の左手が俺の背中に触れた。
刹那、身体中に何かが流れ込んでくる。
「分かる? いま、強制的に魔力を身体中に循環させて身体強化を図ったわ」
猛獣が咆哮を上げた。
鼓動が早まる。
全身から汗が噴きだしたような錯覚を覚える。
「魔物?」
「魔物じゃないわ。普通に猛獣よ」
後退りながら『たっくん、頑張って』、とささやくような声援。
「いやいや、無理だろ。動物園でも見たヒグマの三倍はあるぞ、あれ。だいたい武器の一つもないのにどうやって戦うんだよ」
「錬金工房で武器は作れないの?」
「無理だ。使い方が分からない」
「魔力で身体強化を図りましょう。武器はその辺の岩で大丈夫なんじゃないかしら? あ、怪我しても光魔法で治してあげるから安心して」
明るく振舞っているが声が切迫している。
これはかなりヤバい状況だ。
「属性魔法が使えるって言ったよな? 魔法でチャチャっと片付けられないのか?」
「それこそ無理よ。力がほとんど失われているんだから、属性魔法なんて申し訳程度のことしかできないわ」
「それじゃ怪我したって直せないんじゃないのか?」
「それは大丈夫。光魔法だけは健在よ」
どこまで信じていいのか怪しいな。だが、いまはそんなことを気にしている場合じゃない。
突如、猛獣が駆けだした。
速い! 距離が一気に詰まる。まずい! 百メートルを切った!
「魔力による身体強化ってどうやるんだ? 身体強化の方法を教えてくれ!」
俺の言葉が終わらないうちに、彼女の左手が俺の背中に触れた。
刹那、身体中に何かが流れ込んでくる。
「分かる? いま、強制的に魔力を身体中に循環させて身体強化を図ったわ」
猛獣が咆哮を上げた。
鼓動が早まる。
全身から汗が噴きだしたような錯覚を覚える。