「誰かに使い方を教えてもらうこともできないから自力で何とかするしかないわね」
「頼むから俺の前途に不安の影を落とさないでくれ」
「落ち込みたいのはこっちよ」

 ユリアーナが憂わしげな表情を浮かべた。悩みは俺と同じ、多難そうな前途のようだ。

「でも、普通は誰かに教えてもらうまでもなく、自分のスキルなら直感である程度分かるはずなのよねー」
「やめてくれ。心が折れそうだ」
「先ずは魔道具ね。試行錯誤して何とか魔道具を作れるようになりましょう」

 立ち直ったユリアーナが当面の目標を打ち出した。俺に自作の魔道具を装備させた戦わせようという計画だ。

「根本的に無理がある。俺は運動神経があまりよろしくないんだ」
「運動音痴なんて気にしなくても大丈夫」

 オブラートに包んだのに、俺のブライドを一言で打ち砕いてくれたな。
 言葉に詰まっている俺を置き去りにしてユリアーナが続ける。

「魔力による身体強化が可能よ。たっくんの魔力は容量も出力もこの世界の住人とは比べものにならないくらい大きいの。魔法による身体強化で上位の戦闘職以上の肉体能力は簡単に得られるわ」
「つまり、俺は十分に強いってことか?」

 俺の中で一度は失われた意欲が再び頭をもたげた。そのタイミングでユリアーナがさらに持ち上げる。

「そうよ、たっくんは強いわよー。悪人どころか魔物だって簡単に倒せるくらいなんだから」

 可愛らしい笑顔。あの笑顔に騙されたんだよなー。
 当面どうするのか聴こうとする矢先、俺は視界の端に動く影を捉えた。