「この辺りで商売をするならラタの街の騎士団の覚えがよくなるのは金銭に換算できない利益があると思うが、どうかな?」

 思案している俺に騎士が強い口調で言った。
 なるほど。協力しないと後々に禍根を残すことになると言うわけか。

「分かりました。協力させて頂きます」
「では、私は隊長に報告をしなければならないのでこれで失礼する。踏み込む時間は追って知らせる」
「その時間ですが、二十時から二十二時まで先約があります」
「申し訳ないが我々を優先させて欲しい。先約は断ってもらえないだろうか」

 言葉は丁寧だが口調と雰囲気が高圧的だ。

「先約は代官様との商談です。実は献上品をお持ちすることになっております。お断りするとなれば第二部隊の隊長のお名前を出さないとなりませんがよろしいでしょうか?」
「代官様との約束だと先に言え!」

 本性を現した感じだな。

「如何しましょう」
「代官様との面会は二十二時には終わるのだな!」
「はい、遅くともその時間には終わる予定です。とは言え、時間が来たからと言って私から面会を切り上げるというのも……」

 眼前でイラついている騎士をさらにからかう。

「もういい! 夜中だ! 夜中に踏み込めるよう、私の方から隊長へ進言する」

 用事は済んだとばかりに立ち上がる騎士に問い掛ける。

「料理が来るのはこれからですが?」
「急いでいる! 料理は勝手に食べてろ!」

 吐き捨てるようにそう言うと、騎士は足早に酒場を出て行った。