「よし、運び込め」

 騎士団の詰所奥にある倉庫前に到着するとパウル隊長の号令一下、配下の騎士と共に俺とロッテも盗賊たちからの押収品を騎士団の倉庫へ運び込む。
 荷物を運んでいると手ぶらのユリアーナが近付いてきた。

「あきれたものね。騎士団の倉庫を利用しているとは思わなかったわ」
「まったくだ。灯台下暗しとはよく言ったものだ」

 盗品を隠すのだからバレても言い逃れができるように、別名義で民間の倉庫を借りていると予想していただけに驚きだ。

「ところで、第二部隊はどうしちゃったの?」
「踏み込むタイミングをどうするか、連絡が入るはずだったんだが未《いま》だに連絡がない」

 第二部隊が踏み込んでくるなら今が絶好のタイミングだと思うのだが、踏み込んでくる気配はない。

「第一部隊と行動を共にしていたから、あちらさんとしても接触する機会を逸したのかもね」
「そんなところだろうな」
「楽しみにしてたのに……」

 心底残念そうに肩を落とした。その姿に、第二部隊のコンラート隊長の提案を話して聞かせたとき、 踊りださんばかりの喜びようが蘇る。

『あのいけ好かないオヤジが犯罪者になる瞬間を間近で見られるのね』

 実際、軽やかな足取りでターンを決めていたな。

「そのうち接触してくるだろ。パウル隊長が犯罪者として捕えられるところを間近で見たいのは俺も一緒だ」
「そうね、そうよね……」

 そう言い残して馬車へと引き返すユリアーナを見ていると、年配の騎士が声をかけてきた。

「あの娘、孤児院から引き取ったんだって?」

 視線の先には誰よりも多くの荷物を抱えたロッテがいた。

「ええ」
「ありゃ、相当量の魔力をもっているな。うちの騎士団に欲しいくらいだぜ」

 ロッテが大量の荷物を抱えて足早に倉庫へと消えていく。
 少しやり過ぎたかな。