「騎士団の小隊二つくらいに負けはしないさ」
「シュラさんが強いのは知っています。でも、あたしが言いたいのはそう言うことでは無くですねー」
「問題ない。騎士団と戦うことになってもロッテのことは俺が守る」
「え?」
ロッテの背筋が急に伸びた。
「お前を傷付けようなんて輩は俺がぶちのめす」
「シュラさんったらー」
身体をくねらせて嬉しそうに振り向いたロッテだったが、後続の馬車を視界に収めた途端その表情が一変する。
「違います! そうじゃありません! 騎士団と戦わない方向でお願いします」
いま、一瞬、騎士団のことを忘れたな。
「俺としてもあの連中と戦いのは本意じゃないからな。まあ、できるだけ戦闘は避けるようにするよ」
第二部隊のコンラート隊長からの提案もあるし、できれば第一騎士団と争うことなく盗品をお引き取り願いたい。
「約束ですよ」
「約束する」
安堵したロッテの心をユリアーナが再び乱す。
「そうは言っても、あちらさん次第なのよねー」
今まさに罠に掛かろうとしている、憐れな獲物を見るような視線が後続の馬車に向けられる。ユリアーナの視線に釣られ、俺も騎士たちが搭乗する馬車に視線を向けた。
「随分と入念に剣の手入れをしているな」
「さっきは防具のチェックをしていたわ」
「いやー、いやー」
ロッテが天を仰ぎながら首を横に振る。
それでも馬車は街道を外れることなく盗賊のアジトへと向かって進んで行った。
◇
途中、魔物や盗賊に襲われる来なく荷馬車は予定通り盗賊のアジトへ到着した。
「ここがそうなのか?」
「はい、ここが先日お引渡しした盗賊たちのアジトです」
パウル隊長にそう答え、俺とユリアーナ、ロッテの三人が真っ先に洞窟へと足を踏み入れる。半数の五人を荷馬車付近に見張りとしてのこし、パウル隊長以下、五人の騎士がそれに続いた。
洞窟を少し進み、居住区にとして使っていたスペースに入った途端、若い騎士たちが感心したように声を上げる。
「洞窟をアジトにしていると聞いていたから、獣や魔物のように不衛生なところを予想していましたが、意外と綺麗に使っていたんだな」
「椅子やテーブルも結構いいものを使っているぞ」
「こりゃ盗品の方も期待できそうだな」
何とも浅ましい騎士たちだ。
内心呆れるが、それを表にださないように注意してパウル隊長に話しかける。