「もう一度問います。神聖石があれば本当に人々を救うことができるのですね?」
「よろしい。その力、貸し与えましょう」
「感謝いたします」
「ただし、貸し与えるのは力だけです。神聖石はこの場で返してもらいます」
「どういうことでしょう……?」
「あなたに祝福を授けましょう」
「ありがとうございます」

 助祭がお礼の言葉を述べた瞬間、ユリアーナから合図が出された。その合図に従って神聖石ごと助祭を錬金工房へと取り込んだ。

「よし、成功だ」

 俺は助祭が所持していた神聖石だけを取り出してユリアーナに渡す。

「間違いないわ。これで二つ目」
「じゃあ、次のステップに移るぞ」
「お願い」

 神聖石を抱きしめてユリアーナが小さく首肯した。
 俺はスラム街で悪人たちから強奪して集めた光魔法のスキルを、錬金工房内にいる助祭に幾重にも付与して、彼の光魔法の強化を図る。

 神聖石がなくても助祭がこれまで通りかそれ以上に住民たちのために力を振るえるようにする。
 それがユリアーナの計画だった。

 ユリアーナ曰く『善行を積む敬虔な信徒には女神の祝福を与えないとね』
 予想外にまともなところがあるのに驚いたのは内緒だ。

「よし、これで神聖石の力を借りるのと同等の光魔法が使えるようになったはずだ」
「次は魔力をお願い」

 俺は無言で首肯すると早速作業に取り掛かった。
 同じようにスラム街で強奪した魔力をやはり幾重にも付与して助祭の魔力量の増大を図った。