「何かやべえよ、こいつら」
「逃げた方がいいんじゃ……」

 既に五人とも戦意を喪失している。

「ちっ! 退け!」

 大柄な男がそう叫ぶと、ナイフが突き刺さった膝を抱えている男を除く四人が一斉に背を向けた。
 同時にいましがた取り込んだ四人のチンピラを彼らの頭上に出現させる。

「な、なんだ!」
「うわ!」

 人間同士がぶつかり合う音と悲鳴が混じり合って路地裏に響き、逃走しようとした男たちに更なる恐怖を与えた。

「化物だ!」
「ひぃ!」
「で、でたー」

 叫び声を上げて転がるように逃げる五人の男たちを錬金工房へと収納する。
 残ったのは錬金工房から吐きだした四人の男たち。

 そんな彼らに冷たい視線を向けたユリアーナが、

「さっさと眠らせちゃいましょう」

 そう口にして状況がつかめずに混乱する男たちを睡眠の魔術で眠らせた。
 彼女に倣って、たった今取り込んだ五人の男たちを錬金工房から吐きだし、睡眠の魔術でまとめて眠らせる。

「さて、それじゃ、教会へ向かうか」

 俺たち二人はスラム街を後にして教会へと向かった。

 ◇

 教会の周囲に巡らされた塀の上から敷地内にある建屋の一室を指さすと、

「あの二階の角の部屋よ」

 ユリアーナが例の助祭がそこにいると断言した。

「助祭の他には?」
「助祭一人。他の人の魔力は感じないわ」

 時間は真夜中、ほとんどの人が寝静まったころだ。
 助祭が起きていてくれると話が早いのだが、まあ、普通に考えて寝てるよな。

 俺は街で売られていた女神・ユリアーナの像に双方向の通話機能を付与した魔道具を錬金工房から取り出した。
 端的に言えばトランシーバーのようなものだ。