「よう、怪我はなかったか?」
「ここいらは物騒だからな。気を付けねえと奴隷商人に攫われちまうぜ」

 威嚇をしているつもりなのか、本気でこの状況を楽しんでいるのかは分からないが、男たちは口元に薄ら笑いを浮かべて余裕の足取りで近付いてくる。

「右側の路地からも四人近付いてくる」

 ユリアーナのささやきに小さくうなずき、そちら側の路地から近付く連中には気付かない素振りで姿を現した五人の男たちを正面に捉える。

「最初の一撃をわざと外すなんて余裕じゃないか」

 小ばかにしたような俺の口調に男たちが警戒の表情を浮かべた。

「兄ちゃんこそ余裕じゃねえか……」
「スラム街を二人きりで無警戒に歩いているんだ。それがどういう事か分かならいほど頭が悪いのか?」

 ユリアーナも抜けているところがあるし、魔力感知の魔道具を早めに創った方がよさそうだな。

「何だとこの野郎!」

 凄んでみせる投げナイフを手にした男に向かって言う。

「ナイフは返すよ」

 セリフと共に足元に突き刺さったナイフを錬金工房に収納すると、すぐさま投げナイフを手にした男の左(ひざ)にナイフを出現させる。

「ギャーッ!」

 ナイフを手にしていた男が悲鳴を上げて地面に転がった。